<< 新ビンビールズの歩み 第四話 協力者と放浪者 | main | 新ビンビールズの歩み 第六話 サラリーマン宣言 >>

新ビンビールズの歩み 第五話 ザ・ベスト



2010年 春

新作の5曲入りミニアルバムのタイトルを発案したのはまた毛ガニだった。アルバムのタイトルをつける才能だけは飛びぬけている。「『ベスト』ってどう?ニューアルバムなのにベスト」「それだっ!」ということで『ザ・ベスト』に決定した。「これが今の俺たちのベストだよ」という意気込みにぴったりのタイトルだった。その頃の音楽シーンはもう"CDが売れない時代"がいよいよ本格化、売れるのはベストアルバムばかりという時代だった。メジャーなレコード会社はとにかくCDを売るために、デビューして数年のミュージシャンの曲をなんとか掻き集めてベストアルバム名目で出すという露骨な手段に出ていたのが見えみえだった。そんな時代へのカウンターのつもりもあった、全曲新作なのに『ザ・ベスト』。

自主制作のアルバムではあるけれど、いろんな部分で前作よりも完成度の高いものにしようと決めていた。今回はジャケ写は思いっきり顔を出そうよと俺が提案した。しっかり顔を出して、サラリーマンであると同時に本物のバンドとして本当にやっていくんだという決意を示したかった。ブックレットもまんぷくのデザインにより丁寧に丁寧に作り込んだ。アーティスト写真とブックレットの撮影はずっとビンビールズのライブ写真を撮り続けてくれるカメラマン 木下ひろこ 氏によるもの。彼女もまた何かを突き詰めているビンビールズの強力な協力者の一人である。現在でもビンビールズの全ての写真は彼女が撮影し、作品からサウンドが聴こえてくるような、生々しい記録を残し続けてくれている。

2010年2月20日『ザ・ベスト』レコ発、下北沢MOSAiC。前売りリストは予約で埋まっていた。出番を待っている間にもたくさんの人からお祝いの言葉をもらった。自分たちにも、観に来てくれた人にも、なにか特別なことが起こるという高揚感があったと思う。ライブ直前に交わされたまんぷくと毛ガニのなにげない会話、それが印象に残った。

「毛ガニ君、君とふたり小岩のスタジオで奥田民夫の曲とかちまちまやってた頃は、まさかこんな日が来るなんて思わなかっただろう。」
「うん、夢にも思わなかった!」

本当にメンバーにしてみれば、これが本心だろうと思う。そして、その言葉を本当に実感したのは、幕が開き、スリーコードの演奏を始めた瞬間だった。





フロアを埋め尽くしてくれた人たちの笑顔と熱狂は驚いた。なんとなくこの映像の自分の表情にもその驚きが現れているようで今では少し恥ずかしい。1曲目の「スリーコード」を演奏しながら、それまで忌み嫌っていた『社会人バンド』『サラリーマンバンド』という肩書きを、これからは胸をはって高らかに宣言できるな、そんな風に思った。

(続く)


第一話 理想と現実 http://blog.bimbeers.com/?eid=1421967
第二話 Do It Yourself http://blog.bimbeers.com/?eid=1421968
第三話 キラーチューン http://blog.bimbeers.com/?eid=1421969
第四話 協力者と放浪者 http://blog.bimbeers.com/?eid=1421970
第五話 ザ・ベスト http://blog.bimbeers.com/?eid=1421971
第六話 サラリーマン宣言 http://blog.bimbeers.com/?eid=1421972
第七話 始まりも終わりも無く http://blog.bimbeers.com/?eid=1421973
第八話 到達点 http://blog.bimbeers.com/?eid=1421974
第九話 晴天の霹靂 http://blog.bimbeers.com/?eid=1421975
第十話 復活 そして http://blog.bimbeers.com/?eid=1421976
最終話 不死鳥 http://blog.bimbeers.com/?eid=1421977


at 00:31, bimbeers, 新ビンビールズの歩み2009〜2013

comments(0), -, - -

comment